500年の歴史を持つ吉野林業は、長年に渡り受け継がれた育林技術、恵まれた自然条件により、高品質な木材を生み出してきました。

 吉野杉、吉野桧は日本全国にその名をとどろかせ、日本を代表する木材として、まさに「にっぽんの木の文化」のど真ん中にいました。

 しかし、戦後の高度経済成長の中、生活様式が変化し、木材の代替品が増え、木を使う場所が急速に失われ、日本から木の香りがしなくなりました。ですが、日本の山々は戦後の植林により、スギだらけ、ヒノキだらけとなり、林業が儲からない事が大きな理由で手入れが進まず、山の荒廃だけが着実に進んでいます。

 日本人が木を使わなくなった理由はたくさんあります。

 大量生産、大量消費、合理化、規格化が求められた時代、木材の大きな需要先であった住宅部材は、規格化が容易で、大量生産ができる人工建材に変わりました。人工建材は誰しもが扱いやすいもので、経済効率優先の現代産業に欠かす事にできないモノとなりました。
 一方、自然素材である木材の扱いには職人的知識、経験、技術が必要であり、生産性の低い、合理的でないモノと位置づけられました。
 その結果、長年にわたり、日本のマテリアルの基本であった木材は、その存在意義を失い始めました。

 杉の持つあたたかみ、桧の持つ香しさ。人間と同様に同じモノが一つとない面白さ。時の移ろいと共に味わいの増す木肌の美しさ。
 日本人が忘れてはならない大切な感覚がそこにあるように思います。

 長い歴史の中で、日本人は建築、家具、調度品、生活雑貨にいたるまで、木を美しくデザインし、木の特性を活かし、木材を楽しみながら使っていました。

 この「デザイン」という視点が日本の林業再生に欠かせないキーワードだと考えます。

 日本で最初に植林が始まった吉野から、木材をカッコよく、面白く、気持ちよく、美しくデザインした吉野材のプロダクトを発信していく。
山、街、人をデザインで結び、新しい関係を築いていく。

 これこそが「にっぽんの木の文化」の復興、日本の林業再生につながると思います。

 これがTOY,Pに込める私達の想いです。