U フローリングの下地施工編

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 ここでは、無垢フローリングの下地工法として、一般的に広く用いられる『根太工法』と『二重床工法』をご紹介いたします。 これらを基本として、施工予定の現場状況により、適した工法を各々ご検討ください。 
 根太工法
 従来からの一戸建て木造住宅で多く用いられる工法です。 土台の上(上階の場合は桁梁)に“大引”を架け、さらに根太を渡して、その上に“捨貼り”を施します。 ゆえに『捨貼り工法』とも呼ばれます。 

1.充分に乾燥し、プレナーで均一に厚みを揃えた“大引”(90o角以上推奨)を、適した間隔三尺(約909o)ピッチ※1で並べます。 床の基礎的な部分ですので、水平に並んでいるか、よく確認しておきます。
※1 この場合、基本的に“ピッチ”は大引き材の芯から芯で計測します。 次に掛ける根太材のピッチに至っては、狂いが出てくると後の捨貼りや仕上げフローリングの張り込み時に支障が出てくることがありますので、基礎として慎重に墨付けしましょう。 

2.その上に、同じくプレナーで厚みを揃えた乾燥材2の“根太”(45o角以上推奨)を適した間隔で施工します。 後にフローリングを三尺ずらしのチドリ状に貼り込む場合は、根太の間隔は一尺(303o)ピッチ※3にします。 床上に重量物を置く予定があったりして強度を必要とされる場合は、大引や根太の間隔をさらに狭くして本数を増やすなど、補強措置を行ってください。  壁際は根太と同じ高さに“際根太(キワネダ)”を取り付け、水平器で最終的な水平確認をしっかり取ります。 
 断熱マットや防音マットを使用する場合は、根太と根太の間に入れ込んでおきます。 
※2 根太や捨貼り等の木材の乾燥度合いは、含水率20%以下が目安です。 無垢材の場合、多少は仕方ないですが、あまりにねじれていたり、反りがきつい材は使わないようにします。 吉野中央木材(株)では、『大引材・根太材』等の部材指定でご注文いただけましたら、それに適した材を揃え、四面プレナーにてご希望寸法に合わせてお届けいたします。
※3 捨貼り材を尺単位で張り付ける場合の寸法取りです。

3.根太の上に、“捨貼り”を施します。 厚み12〜15oほどの捨貼り用の一等材や、耐水合板を貼るのが一般的です。 捨貼りは根太に対して直交でチドリ状に張り、捨貼りどうしの接合部は2oほど、壁との接面は5oほど空けて、吸排湿による材の伸縮対策とします。※4  床鳴りや浮き防止のため、根太上に専用の接着剤※5を塗ってから張り付ける事が多いです。 仕上げではないので、釘留めは脳天打ちでかまいません。 電気ドライバによるコースレッド留めでもOKです。 いずれにしても、釘頭は少しめり込ませて、後に仕上げ張りの障害にならないようにしておきます。 捨貼りの上面に、見えなくなる根太の位置を墨付けしておくと、仕上げフローリング材を張り込む時に、釘打ち箇所の判りやすい目印になります。
 床下状況により湿気が多い場合などは、根太と捨貼りの間※6に0.1o厚以上の防水シートを敷き込みます。 同様に防音や断熱用のシートを使用される場合も、この間に敷き込みます。
※4 接合部に少し隙間を開ける事により、木材の吸湿時による伸びを逃がします。
※5 根太の床貼り専用接着剤以外は使用しないでください。 水性の木工用白ボンドは水分に弱く、湿度によりはがれる恐れがあります。
※6 捨貼りと仕上げフローリング材の間にこういったシート類を敷くと、接着剤や釘が効き難くなり不安定感が出るので、できるだけ根太と捨貼りの間に挟み込んでおくようにします。
 ↑イラストは、長さ六尺(約1.82m)の捨貼り材を、三尺ずらしのチドリ張りする場合の割付例です。 後に上に仕上げる、フローリング材の張り方も考慮して、割付方法は決定する事になります。 捨貼り材も、木口の接合部は必ず根太の上になるように置き、確実に釘留めしていきます。 ちなみに“チドリ張り”は、”りゃんこ張り”とも呼ばれています。

4.下地がしっかり完成したら、仕上げフローリングを張り付けていきます。次のページ参照!)
 ・・・と、その前に張り終わった下地の上を歩いてみて、捨貼りに浮き上がりや、歩くとキィキィ鳴るような場所がないか、よく確認しておきます。 釘の頭もしっかり埋め込み、できるだけ綺麗な平面になるようにしておきます。  捨貼り材の端など、跳ね上がりがあれば手ガンナで軽く削って整えておきます。 この際、掃除もして木屑などが挟まらないようにしときましょう。


 二重床工法
 マンションなどで、床コンクリートスラブ直近にフローリングを敷設する場合に多く用いられる工法です。 高さ調整ボルトや防振ゴムが付いている支持材を床コンクリート面に並べ、その上にベースパネルを置き、捨貼りします。 支持材の上に床を置くという事で、『置き床工法』とも呼ばれます。 この工法が採用される現場では、防音処理も同時に必要な状況が多いので、それらも事前に判断し、対策を施しておきます。 尚、支持材やベースパネルは、各建材メーカーから様々な種類が販売されておりますので、施工環境に適した材をお選びください。 その際施工方法は、必ず購入メーカーの施工要領書を参照してください。
1.際根太を“束(ツカ)”を置いて取り付けます。※1 際根太を支える“束”は450o以下の間隔で置いてください。 束のスラブへの接地面には、専用のウレタン系接着剤を使って固定したほうが安心です。 際根太は水平器で確実に水平を出して、床面の基礎とします。 最終的に仕上げフローリングを張る時の事も忘れずに、高さ調整しておきます。
※1 コンクリート面は、結露で湿気が多くなるため、直接スラブに根太を置く『ころばし根太』工法は避けたほうが無難です。

2.しっかり高さ調整した支持材※2を並べ置いて、その上にベースパネルを設置します。 伸縮対策としてのベースパネル同士の貼り隙間は、メーカーの指示に合わせて取りますが、この時、その隙間寸法に合わせた『隙間ゲージ』※3を3個以上製作しておくと、たいへん便利に工事できます。 通常、壁面からも5oほど隙間を取っておきます。
※2 高さ調整は、仮並べした支持材の上にベースパネルを仮置きし、水平器を用いて調整していきます。 後に傾斜や凹みが出ないよう、かなり慎重に作業を進めます。
※3 『隙間ゲージ』は、身近な物でよく作られています。 建材の切れ端や金属・プラスチックのアングル、物差しや厚紙・コインなんかを貼り合わせた物、などなどです。

3.ベースパネルの上に捨貼りします。 この時、ベースパネルの接合部分と捨貼りの接合部分が、できるだけ重ならないように張り付けていきます。 釘は二尺(約60p)間隔ほどで打っていきます。 捨貼り固定用の釘やコースレッドは、床下まで長く打ち抜かない程度に、長さを慎重に選んでください。※6 捨貼りも同じく接合部分は2oほど、壁面からは5oほど隙間を空けるよう貼り付け、吸排湿による伸縮対策とします。
※4 床下を通る配管・配線などを傷付けないようにする配慮です。 釘長は“捨貼り材の厚み+ベースパネルの厚み”程度の長さを選んでください。 電気線やガス管などを傷付けると、たいへん危険です。

4.下地がしっかり完成したら、仕上げフローリングを貼り付けていきます。次のページ参照!)
 こちらも同じく浮き上がり(逆に凹み)や、床鳴りするような場所がないかよく確認してから、仕上げフローリングを張っていきます。 掃除も忘れずにしておきましょう。

まとめ

 下地の処置は、その他さまざまな手法がありますので、環境に最も適合した工法をじっくり検討してから工事開始してください。 状況により『捨貼り』を省いて、仕上げフローリング材を直接根太やベースパネル上に張り付ける事もありますが、『捨貼り』の意義は、増強・防音・調湿・断熱等々ありますので、できれば使用されたほうが良いと思います。 吉野中央木材(株)では、割安な杉の一等材を四面プレナーで寸法を揃えて捨貼り用として販売しておりますので、フローリング材と合わせてご相談ください。
 下地施工の一番のポイントは、やはりレベル(水平)をできるだけ正確に出し、防湿・防音などの対策を充分に備えておくことです。 仕上げ工事終了後に不具合を感じてもなかなか補修し難いです。

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