第5回「原木の皮むき」

吉野中央木材(株)専務が送る、国産無垢材製材所のドキュメント。
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1、機械による皮むき

 前回で原木の整理が終わりました。いよいよ製材に入って行きます。ですが、その前に必要な工程があります。「皮むき」です。皮付きの原木のままでは製材しにくいので、皮を剥きます。皮むきには手作業と機械の2種類があります 。 
 木材の皮むきの機械化は早く、40年ほど前に登場しました。当社で使用している皮むき機はカットバーカー式と呼ばれるものです。皮むきの様子を写真にてご説明しましょう。
←■皮むき機の全体像です。 あまりに大きいので空中撮影です(笑)  奥の番台に置かれた原木を剥いていく事になり、剥き終った丸太は手前に落としていきます。 そういう手順で、手前の黄色い丸太はすでに皮剥きが終わった状態の物になります。
 中央のタイヤの上に原木を移します。  そのタイヤが原木を回転させます。■→
←■その回転している丸太の上を、この装置が前後に移動しながら、皮を剥きます。
 これが皮を剥くバーカーです。 特殊なブロック状の刃物が付いていて、その刃物を高速回転させて荒皮を剥いて行きます。 剥くという より削る感じ?■→
←■バーカーを丸太上を何回か往復して皮を剥きます。 丸太も元と末によって太さが違ったり、飛び出した節があったり、曲りも多少はありますので、バーカーを微妙に上下したり送材スピードを変えたりしながら、あくまで皮だけを剥いていくように操作します。 これが慣れないと意外と難しい!
 前後移動の操作を間違えると、鉛筆を削るみたいに先細りになってしまいます。 という事で、これは失敗です。 尻尾の先まで食べれなくなってしまった感じです。もったいない(泣)■→
←■操縦室の操作盤です。レトロな感じがします。電車の運転室みたいな
感じもして、子供の頃は「憧れの場所」でした。
 剥かれた皮はベルトコンベアで皮箱に運ばれます。 これは粉砕されていますので、今のところ有効な利用方法が無く、焼却処分されています。 最近、とある機関が再利用する方法を研究開発しているとのお話を耳にした事があります。 ぜひ開発していただきたいところです。■→
 杉と桧では皮の性質が異なり、剥きやすさが違います。 桧の方が剥きやすく、杉の方が剥きにくいです。桧であれば1往復でほぼ終わるのですが、杉は2往復以上かかります。杉の皮は乾燥が進むと吸着しやすい性質があるようです。
←■上が杉、下が桧です。杉の方がピッチリとした感じがします。 皮剥きした感じ、皮も桧のほうが強度があるように感じます。 堅いだけにぺろっと剥けるので、桧のほうが剥きやすいようです。 ただしベルトコンベアがつまりやすかったりします。 逆に杉は細かくパラパラになってしまいます。 ですので剥くのに時間がかかりますが、コンベアが楽に運べるので、掃除が楽だったりします(笑)


2、手作業による皮むき

 手作業で剥く場合もあるのですが、これは杉皮(すぎかわ)や桧皮(ひわだ)を取る為です。昔は屋根材で使われる事が多く、最近では一般住宅では少なくなりましたが神社仏閣では使われる事が多いそうです。杉皮や桧皮は断熱効果が高く、湿度の調整にも優れているので、日本の建物には非常に適しているようです。 
 杉皮は乾燥が進むと木に吸着し剥きにくいので、山で切り倒した時に剥きます。昔はこの杉皮の売上で伐採費用をカバーできたそうです。林業にとって良い時代だったわけです。
 今回は桧皮の手剥きの様子をご紹介しましょう。
 皮むきに使う道具はこの二つ。上がヘラ、下がカマです。カマを使い1m間隔で縦に区切りをつけ、ヘラで皮を剥きます。■→
←■ヘラを皮の隙間に入れて、どんどん剥いていきます。早業です。

 ※写真にポインタを乗せてみてください。
 軽トラック一杯分の桧皮を取るのに約100本の原木が必要です。 大変な労力です。■→

 皮むきはできるだけ製材をする直前に行います。これは皮むきした原木を放置しておくと、小石などが付く可能性があり、製材のノコギリを傷めてしまうからです。 さて原木の整理と皮むきが終わり、製材の準備が整いました。いよいよ次回からは製材工場の内部に入り、製材の様子をリポートしたいと思います。お楽しみに! つづく


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